金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
...う、うわぁ...。
私は思わず苦笑いを返してしまいそうになり、慌てて顔の筋肉に力を込めた。
怖いって言うのももちろんあるけど、どっちかと言うと、えぇ本当に言った...っていう気持ちでいっぱいだ。
でもここで笑ってしまったら、余計に逆上させてしまうことが分かりきっている。
「...なに黙ってんだよ!!」
梅田さんの怒鳴り声に、私は身を縮こまらせた。
あの目力で睨みつけられながら大きい声を出されれば、やっぱり怖い。
『私は須藤くんの何なのか』
答えようと考えて、思考が止まった。
...あれ、私って須藤くんの何...?
...いや、普通に考えれば、ただの、金曜日自習室で勉強している者同士だ。
...でも、私にとっては好きな人で...。
じゃあ、須藤くんにとって、私は?
一緒に帰ることは出来るくらいの...友達?
...それとも、それ以前...なのかな...。
ただの顔見知り程度では、無いことは確か...だけど.....多分...。
私の返事の遅さに、梅田さんは確実にイラつき出している。
私は小さく声をかけた。
「...私にも...分かりません。」
梅田さんが、ジロリと私を見て言う。
「...は?どういう意味?」
私も負けじと、足を踏ん張った。
やっとこさ言葉を繋ぎながら梅田さんの目を見つめ返す。
「...多分、梅田さんが疑ってるような関係じゃ...ありません。...何でも無いんです。」
自分で言ってて、答えを見つけた気がした。
虚しいけど、これが今の私達だ。
...そう、私達は、何でも無い。
文字通り、名も無い関係。
私がいくら特別な思いを抱こうと、いくら須藤くんを身近な人と思おうと、事実、今の私達は名前なんてつかないくらい、何でも無い関係なんだ...。