金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
自分でも、本当に似合ってるみたいで、少しだけど、少しだけだけど、自分に自信が出てきたの。
「...ね、いいでしょ。新しい自分に、なってみようよ。」
りっちゃんの言葉に、
...私は、力強く、頷いた。
りっちゃんが満足そうに笑った。
「...じゃあ次ね!」
そう言ってりっちゃんはまたポーチを覗く。
「琴子、左右の目0.5ずつくらいだよね?」
「...うん。」
私が何のことか分からず不思議そうに頷くと、りっちゃんは小さなパッケージを取り出した。
「じゃーん!ワンデーコンタクト!」
...こ、こんたくと!?
私には遠い存在だと思っていたものの登場に、私は驚いてりっちゃんを見た。
「やっぱ、琴子のイメージってメガネも大きいんだと思うんだけど、そろそろコンタクトも試してみない?
もちろん、お母さんに秘密でやるのが嫌ならやらなくてもいいけど...。」
「やってみたい。」
少し食い気味に、私はそう言った。
りっちゃんは少しビックリしたみたいだけど、また、あのニヤニヤ笑いになって
「最初は辛いぞ~?」
と脅かす。
「...が、頑張るもん!」
私はりっちゃんのニヤニヤを吹っ飛ばすように言った。
本当に、初めては慣れていないから怖かったけれど、私はなんとかつけることが出来た。
それからりっちゃんは、淡い色つきのリップを私に塗って、似合うからと一本くれた。
受け取った人生初の化粧品は、りっちゃんの優しさと私の変わりたいという気持ちの象徴のようで、とても、嬉しかった。
それから、りっちゃんと色んな事を話した。
私の髪に何かのスプレーをかけながら、りっちゃんは
「...そう言えば、須藤くんと会って私が好きになっちゃったら~とか言ってたけど、私好きな人いるから。」
とあっさり言う。
「え、誰!?初めて聞いた!!」
って私が聞いたら、りっちゃんは横目で私のことを見るの。
「...言っとくけど、琴子も、言わなかったんだからね。だから言わなかったってわけでもないけど、これはお互い様なんだからね。」
って。
すごく悲しい、て分かった。
なんで教えてくれなかったのって怒る気持ちもあって、でも、それよりも、今まで言ってくれてなかったという事実が、ただただ悲しい。
「これからは言うよ。」
って私がりっちゃんに言ったら、しばらくの間のあとりっちゃんは私と目線を合わせないまま
「...部活の人...同級生。」
って、顔を赤らめた。
それは恋する女の子の顔で、私は思わず「りっちゃん可愛い」って笑ってしまった。
りっちゃんは怒ったけど、照れ隠しだって私には分かってる。
それも、思ったことを言い合ったことで変な突っかかりが無くなったから、お互いに心を許し合えてるってことなのかな。
りっちゃんとはずっと一緒で今までも色んなことを話していたつもりだったけど、それよりもっと、沢山知れた気がする。
私とりっちゃんの関係も、変わり始めてるみたいだ。
まずは、出来るところから変えてみよう。
新しい私を見つけてみよう。
なかなか前に進めない自分に焦ってしまっても、大丈夫、まだ、『通過点』だから。
りっちゃんの言葉は、私を強くさせる。
急に性格をどうか出来ないなら、形から入ってみるのもアリじゃない?
なんて、今までの私っぽく無い考え方だっていいの。
だって、それもきっと
変わりたいって思うから
...だから。