金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
須藤くんは、私に合わせてくれていた。
男の子だから私よりもっと一歩が大きくて、スタスタ行きたいはずなのに私に合わせて同じ速さで、私の横を歩いてくれていた。
...まぁ、私は男の子と並んで歩いたのなんて須藤くんが初めてだから、よくは分からないけれど。
急がなくていいよって、言ってくれてるみたいで、優しい。
そのおかげで私は安心して、ぎごちないながらもまともに歩けた...気がする。
階段を降りて、下駄箱に着いた。
私は一組だから、向かって右側に向かったけど、須藤は左側に進んだ。
...そういえば、須藤くんが何組なのか、私知らない。
サッと履き替えて目だけでそれとなく須藤くんを追うと、須藤くんは、五組のところで立ち止まった。
.....五組なんだ...!
新しく知れた須藤くんの情報に、心が浮き立った。
私の学校はどの学年も一~六組で、前半の一.二.三組の後は渡り廊下になっていてそこを渡ったら四.五.六組がある。
校舎が東館と西館に分かれている都合上、移動教室の時に意識してそこを通ったりしない限り、滅多に同じ学年の渡り廊下の向こう側なんて行かない。
...だから、金曜日以外に校舎内で会うことはびっくりするくらい無かったんだ...。
私が納得していると、まさか須藤くんは私が後ろから見ているなんて思わないので、昇降口の方へ出ていってしまった。
私は慌てて後を追いかける。
須藤くんは、あたりを探すようにキョロキョロとしていた。
そして、私を見つけた瞬間...フハッと笑って眉を下げた。
「いきなりいなくなったから、先に行っちゃったかと思って焦ったじゃん。」
.....息が、つまる。
須藤くんが、こんなに私を気にかけてくれているなんて。
心の中で、きゃーってわーってなって、でもそれが表に出ないように、必死になってニヤケそうになる頬に力を入れる。
「...行こっか。」
私は小走りで、須藤くんの横にかけよった。