金曜日の恋奏曲(ラプソディ)
相変わらずの派手オーラ、だけど、今日は長い髪を高い位置でポニーテールにしている。
梅田さんは私に気が付くと、怪訝な顔をした。
…あ、そっか。
私がメガネを止めて身だしなみに気をつけだしてから、梅田さんと会うのは初めてだから。
「…あ、長谷川です。」
一応名乗ると、梅田さんはなんとも言えない顔で私の足元から頭のてっぺんまでジロっと見て、微かに首を縦に振った。
「…ちょっと長谷川さんに話したいことあるんだけど。今来れる?」
…前とは違う、と思った。
前とは違って、無意味に声を張り上げたりしないし、いきなり手を掴んで引っ張っていくんじゃなくて、私にyes,noの選択肢を与えてくれてる。
…思ってた人とはちょっと違うのかもしれない。
そう思ったと同時に
…何の話なんだろう。
こないだの問い詰めるような話とは違うんだろう、と推測できて、緊張が走った。
「…はい。」
私がそう返事をすると、長谷川さんは、着いてきて、とでも言うように、くるりと後ろを向いた。
部活に行く前のりっちゃんみたいに、ポニーテールがなびいて毛先で弧を描く。
りっちゃんの髪の方が長くて、黒髪ストレートなのに対して、梅田さんは毛先の色が抜けた茶髪で、ウェーブだけど。
…こっちの髪型の方が、似合ってるけどな。
そう思ってから、って私何様、と思い直す。
揺れる髪の毛を見ているうちに、廊下をまっすぐ進んで梅田さんが以前も連れてきた場所についた。
けれど、あの時とは違って、あの梅田さんの子分みたいな二人はいない。
梅田さんはちょっとあたりを見回すと
「来て。」
と一言そう言って、階段を下りた。
その踊り場にある、壁が出っ張って腰をかけられるようになっている所に、梅田さんは座った。
…そう、私とりっちゃんが前座って話したところ。
元々座るための場所ではないので、二人座ればもうギリギリだ。
二人で特別な話をするには打って付けだと、私は身をもって感じている。
私は梅田さんの視線に従うように、梅田さんの隣に腰を下ろした。
心臓がバクバクしている。
…何の、話なんだろう。
梅田さんは、座り直して、私の方へ体を向けた。
そして、ハッキリした声で言った。
「こないだは…ごめん。」