金曜日の恋奏曲(ラプソディ)




…あぁ。



私が梅田さんの立場だったら。



自分が須藤くんに一番近いと自負していて、なのに、私が知らないところから、親密そうな第三者が出てきたら。



…そりゃあ、ああなるかもしれない。



私は梅田さんの目を見つめ返した。



梅田さんはさらに言う。




「あたし、気が動転して、よく考えもしないまま、ああやって一方的に長谷川さんのこと責めちゃってさ。」





後悔してたんだ、と、彼女は言った。





「…そっか…。」




私は梅田さんの気持ちがとてもよく分かって、体内のどこかが、震えるような気さえしていた。




私の中で、この時の梅田さんは、最初の印象と全然違う人になっていた。



失礼だって分かってるけど…。




…言おう。






私は今までの自分なら、絶対しなかった選択をする。






私は、思っていることを言うんだ。伝えるんだ。





…相手のことをもっと、知りたいから。





私はゆっくり口にする。





「…なんか、正直、梅田さん私が最初に思ってた人と違うな。
もっと…ガサツでキツそうな感じだと思ってた。」



ちょっと、笑いながら言った。



言いづらそうにしてたのは、バレちゃったかな…?



内心はドキドキだ。



…怒らせちゃうかな、とか、考える。



こんな、相手のことをハッキリ言ったのなんて、初めてだ。




そうしたら…梅田さんはさらに目を輝かせた。





「うそ!それ!あたしも!」






…え?



予想外の反応にキョトンとした私に、梅田さんは大きく口を開ける。




「あたしも、正直長谷川さんて、おどおどして何考えてるか分かんなくて、何なのって思ってたよ!」




けどさぁ~、と笑い声を混ぜながら、梅田さんは楽しそうだ。




「めっちゃいい人じゃん、て今は思ってる。」




私の手を取った梅田さんは、顔は優しく微笑みながら、手ではぐっと、頼もしく握りしめた。




私はというと。





「…~~私もだよー!」




私は泣きそうな声で、梅田さんの手を握り返した。




思わず、気持ちが溢れた。




私が今にも泣き出しそうなことに、え?まじ?と梅田さんが目を点にして呟く。




でも、私はそんなこと、気にしない。




…梅田さん…梅田さんは、真っ直ぐなんだ。



ハッキリ思ったことをしゃべるから、相手にキツそうな印象を与えてしまうだけで、根は優しいんだ。





…あぁ、私、勇気を出して思ったことを言えてなかったら、絶対梅田さんと分かり合えてなかった。





そう考えたら、感度的というか、とにかく嬉し涙が、見る間に込み上がってきて。



「待って、超ウケんだけど!」



梅田さんは私の目を見て叫んだ。




きっと見たらすぐ分かるくらい充血しているんだろう。




ちょっとこんな子初めてなんだけど長谷川さんやべぇ!とか、ハイテンションで喋る。



「とりあえず泣くなって!」



梅田さんにそう言われて、私は、笑わなきゃ、と思った。




そうだよ、嬉しいんだから。




涙、じゃない。




私は、ふふふ、と声を漏らした。




梅田さんは気味悪がって、でも更に笑った。


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