Melt
開口一番
特別教室が多い、第二校舎の三階。
階段を上がった右側の扉を開ければ、目に入ってくるのは畳。
茶道部の部室は、現在使われておりません。
だからこそ施錠されているし、室内の押し入れは物置状態になっている。
「っ・・・?・・・・・・ねぇ」
そこに、こっそり座椅子ソファーを持ち込んだ私です。
ついでにカップやポット、インスタントコーヒーなどを持ち込んで、楽園に作り上げました。
でも良いのです。
廃部になって誰も使わない教室だし、私が最後の部員だったので、先生も快く鍵の所持を許してくれています。いや、軽く渋っていたけど、最終的には「まぁ卒業時には返してね」とめんどくさがられた。
「・・・ねぇ、君」
お茶を立てることはできるし、なんなら生け花もできます。
この室内の床の間にある花は私が活けました。我ながら良い出来です。
「・・・寝てる?」
・・・さっきからうるさいのは、一体誰ですか。
私は本気で眠いのです。本気で。
そう思いながらも、眠い目を開けば・・・。
「あ、起きた?」
目の前に、笑顔の男子生徒。
眠い頭は、いろいろしっかりとは考えてくれないらしい。
施錠したハズの教室にどうして入ってきたのかとか、先輩とか後輩とか、社交性とか・・・・・・口に出して良いことと悪いことがあることとか・・・。
とにかく、寝起き私は、すべてがぼやけたままの頭で、感じたままに口を開いた。
「・・・胡散くさ」
相手が目を見開いて、私はやっと、自分が言葉にしてはいけないものを言葉にしたことに気付いた。
「あ、いや・・・」
「・・・ふふ」
慌てて謝罪の言葉と言い訳を探す私に、小さく笑う声。
その人は俯いて肩を震わている。
笑ってくれている、ということに許されたような気持ちがして、肩をなでおろし、安心してそちらを見る・・・と。
「うるさいよ、ヨダレ女」
酷く印象の変わったその人が居た。