ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました
一章
(一)
全て、私が悪い。
病にかかった母を治すのに必要な薬の材料を採取しに来たわけだが。
「聞いてない、聞いてない、聞いていません!『イッカク』って、あんな大きいモンスターでしたかっ!?」
『朽ちた遺跡の森』に生息するモンスター、イッカクの角が私の欲しいものだけど、背後から迫り来るーー木々をなぎ倒しながら追ってくる四つ足三つ目の巨体には涙目で叫ぶしかない。
「無理です、無理っ!最近、火を出して『松明がわりー』とか遊んでいた私(魔法使い)には無理な事件発生中!」
しかもか、村の子たちに『今はランタンあるんだぜー』とからかわれる弱小魔法使いに、あのモンスターは論外だ。
「ごめんなさいっ、本当に、ほんとーに、申し訳ありません!」
私が全面的に悪いので、勘弁してやって下さい!と土下座が出来ればしているモンスター様は、未だに自然破壊まっしぐら。石で出来ている遺跡の一部すらも、木っ端みじんにしている。
いい加減、独り言しながら走るのも限界だ。けど、叫ばずにはいられない。
「追いかけないで下さいっ、逃げます降参!私には、病気の母と、ここ最近、将来を誓い合った大切な恋人ができたので、死ぬわけにはーーうわっ」
転んだ。
死ぬわけにはいかない理由を述べて、生存フラグを立てようとしたけど、死亡フラグだったよう。
イッカク。四つ足で走る巨体は、石ころでも蹴飛ばすがごとく、事も無げに私をお陀仏にさせようとし。
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