ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました
今度は頭を撫でられた。
叱られるよりも、優しくしてもらえる方が涙出来る。
「彼のことを忘れろとは言わないけど。人間、いつまでもそうしていられないでしょ」
早く吹っ切れなと正論を言いつつも、無理やりベッドから引きずり落とさないあたり、母も私の気持ちを理解してくれているのだろう。
「彼、私のために」
「何度も聞いた。最後まで最低な男だったね」
母は、出会った当初から彼が嫌いと言った口振りをするが、追い出さず、私たちの仲を認めてくれるあたり、彼を家族の一員として受け入れてくれている。
世話のかかる子が一人いなくなった。そんな心情が見え隠れする声音だった。
「彼の首、お墓に」
「村外れの墓地だよ。暗くなる前に行きなさい」
今は夕方なのかと、割れた窓の外を見る。そんなことをすれば、同じ村に住むアグナさんと目が合った。
合えば反らされ、けれどまた合って。落ち着きないアグナさんでも、意を決したように口を開く。
「ふぃ、フィー。大変だったな。その、これ。お前、この花が好きだろう?」
渡された花はお見舞いの品らしく、綺麗な物だった。ありがとうと受け取る。窓辺でのやり取りでは申し訳ないと、招き入れようとしたところ。
「何かあったら、い、いつでもオレを頼れよ!オレ、お前のためならーー」
アグナさんが倒れた。
何事かと覗き込めば、泡を吹いて倒れる人一名。
「……」
「あら、死にそうね」
「誰かああぁ、お医者さまああああぁ!」
夕暮れ時のカラスが一斉に飛び立つ叫び声が上がった時でした。