ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました
(二)
「か、母さん!あ、アグナさんは!?」
「とりあえず、無事みたいよ」
しれっとした様子で話されたことでも、朗報は朗報。ホッと一息ついていれば、母が私のベッドに腰かける。
「アグナくん、村一番の力持ちで、風邪引かない歴年齢のような子よね」
「……?そうですね」
キセルを吹かしながら、周知の事実を述べる母の意図が分からない。
「それがいきなり、生死の境をさまようような病気になるかしら?」
「まあ、人生は何があるか分かりませんし」
デコピンされた。
「しかもか、それが好意を寄せる相手に告白しようとした矢先に起こるなんて」
「ま、まさか、母さん!アグナさんの上腕二頭筋目当てに誘惑を」
ダブルデコピンされた。
「あんたよ、あーんーたー。どうして分からないのかしら?あんな、『恋人喪失意気消沈中のところに漬け込んでやるぜ』全開な下心(オーラ)をまとっていたのに」
「単なるお見舞いじゃ。綺麗な花束まで用意してくれて」
「あんたのFカップ揉めるなら、花束の一つや二つ安いものよ。私なんか、そんな男ども(下心)を逆手に取って、色んな物を貢がせたのだから。立派にそれを遺伝しているのなら、あんたも有効に使いなさい」
「そういった恥ずかしくなる事実を口に出さないでくれませんかっ。ーーって、アグナさんが倒れたことと、私に好意を寄せていたことに、何の因果、が」
言いつつも、彼がよく、私に近付く男を根こそぎ殺したいと話していたことを思い出す。あのときは、『そしたらクラビスさんもカウントされますよ!?』でお開きになったが。
「生前は、あんたの目があるから抑制していたけど、死ねば関係ないわね。あの男、結構な魔法使いなんでしょ?デタラメな魔法が使えるならハチャメチャな魔法ーー呪いもかけられるに決まっているわ」