ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました

「いくらなんでも、彼が私に呪いをかけるなんて……」

「そう?あの男なら、あんたの半径10メートルに近付く男は皆抹殺。なんて呪いをかけていると思うけど」

「またまたぁ」

と、外から『きゃあああ、ジェームスさんが花束ともに散ったわあぁ!』との悲鳴が聞こえた。窓の修理をしていないから、よく聞こえる。

「母さんんんん!」

「私にすがりついても、呪いは解けないわよ」

「ど、どどどうしましょう!歩く生物兵器になってしまいました!」

「限定されているわよ。あんたに好意を寄せている男だけのようだし」

「そんな悠長な!母さんなら、私の呪いも解けるのでは!」

遺伝しているのは、何も体型だけではない。魔法使いとしての素質。実際に母が魔法を使っているのを見たことがあるわけではないが、村長の昔話という信憑性高い情報で母の凄さは伝わっている。

「杖一振りで、数多のモンスターや男たちに、赤いピンヒールのつま先を舐めさせた偉大なる魔法使いなら!」

「無理よ。やんちゃして、あんた産んで、子育て初めてから、魔法を使うどころじゃなくなったもの。第一、魔法が使えなくても昔と同じことが出来るし」

女王超えた女帝に魔法はいらなかったらしい。

では、いったいどうすればああぁ!と布団にうなだれる。母からは、天涯孤独で山の中で生きれば?のありがたい正論が返ってきた。

「ひくっ、ひく。もう、それしかありませんね。母さん、洗濯はきちんとシワをのばしてから干して下さい。洗剤と柔軟剤の区別をつけて、あと、お掃除する時は部屋の隅々まで、棚の裏もですよ。食事はおかず一品白米のみだけではなく、きちんと野菜を摂取して、食器洗いは一週間まるまるため込まないでその日の内にし、村の付き合いにはきちんと参加し、月一にある村長徘徊失踪事件では村の人たちと一致団結して村長探しに貢献を」

「呪い解きたいなら、司祭に頼めばいいわよ」

さらりと解決策が返ってきた。

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