ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました

「内に眠りし我が炎よ。汝、今こそ」

「無意味な呪文つけてないで、早くしなさいよ。上級ーー神々レベルのとんでも魔法ならともかく、炎出すくらいで呪文は要らないでしょ」

「しーっ、しーっ。魔法使いらしく言えば、カッコ良くなるんです。彼も以前、酒を飲んで酔っ払った旅人さんが私に絡んだ時、怒りの余りに大地をも揺るがす奈落の底へ突き落とすぞ魔法!をやった時、威圧感たっぷりでしたから」

「私には、器の小さい男の嫉妬丸出しで小物にしか見えないわね。で?」

「あ、出ました」

ブレスレットが巻かれたのは右手。そこからぽんっと、火の玉が出た。

「熱くない?」

「いえ、ぜんぜん。お手玉が出来そうなーーあちっ」

左手で持ったら熱かった。

「な、なんて、とんでもない魔法なのでしょう。人ひとりを火傷にし、何日もの間苦しめてしまう悪魔の炎。取り扱いに注意です」

「村の地形変えるような魔法が使えなくて良かったわね。というか、村長の古びた家の場所が変わっただけじゃなく、王都仕様の高級物件になっていた理由が今分かったわ」

村長の話を聞きたいときた旅人の道連れとなった家の再建は、一晩で済んだ。彼の魔法本当に便利。

「あとは、彼のローブを身にまとえば、空をも飛べる気がするのですが!」

燃やしたなんて嘘ですよねっ。一着ぐらい!と目を輝かせてみれば、ないわよとばっさり。

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