ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました
杖だけは持って行くのを阻止してくれた。
彼の持っていた物で、これをうっかり忘れるなんてないだろう。きっと私のために。
「目に浮かびます。母さんが、騎士団の人たちに、これだけは持っていかないでと、涙ながらに訴えているのが」
「忠誠心岩みたい奴らが、女の涙程度で王様の命令に反するわけないわよ」
「え、でしたら?」
「杖持っていた男にすり寄って相手したら、うっかり忘れていったわよ」
「は!?」
「国境なきバスト」
国境を越えて、全ての男性を癒やしという堕落に誘う技が、岩の忠誠心を砕いてしまった模様。破壊力あり過ぎだ。
で、でも、結果良ければ全て良しにしておこう。おかげで、彼の形見が一つ身につけていられるのだから。
「いってきます」
母と墓標に向かって。
さわりとした風が吹いた。
旅を後押しするような追い風で。