ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました
「やっぱ、男の不意をつくには、女とやってる時に限るよなー!あ、でも、てめえら人間の交尾なんか見たくねえから先走っちゃったけど、ハハ、てきめんー!クソよええな、“夜空”さんよぅ!」
ネコがいない。そうして、三つ目の男がいるともなれば、容易に想像がつく。
全て、私の招いた結果だと。
「クラビスさんっ!」
悲鳴のような叫びが出る。
棚ごと崩れ落ちた彼だが、すぐに立ち上がった。
今にもこちらに向かってくる姿勢になったが、踏みとどまる。
喉元の刃が、私の皮膚に食い込んだのと同じ時。
「要求は?」
地の底から絞り出したような彼の声。話が早いと、三つ目の男は笑う。
「お前の心臓だ、“夜空”」
「……」
淡々とした取り引き光景だが、黙っていられる内容じゃない。やめてと声を出そうとしたが、刃が邪魔をする。
血が伝う。首から鎖骨、服を汚す。
痛い痛いと涙が出そうなのに、彼の方ばかり気を取られてしまう。
予想、していた。
出来て、いたんだ。
どんなに強い力を持つ者でも、弱い者が近くにいれば、同じ程度になってしまう。
むしろ、私よりも簡単にーー弱い者のために、容易に死ねる強い人が彼。
彼は強かった。強すぎたんだ。
私は弱かった。弱すぎたんだ。
だからこそ、この結果は予想出来てしまった。