ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました

「ごめんなさい、答えてあげられなくて。ありがとう、ずっとそばにいてくれて……!」

声を出すだけで、涙が出た。
抱きしめるだけで、震えてしまう。

他にも言いたいことはあるのに、全て腕の力に変換されるようだ。痛いほど強く、されど、彼もまた同じ力で抱きしめ返す。

互いに窒息死でもしそうだった。けど、苦しくない。むしろ、まだ足りないぐらいだと溶け合ってしまうほど身を寄せた。

「君のために死ねるなら、本望だと思ったが、大きな間違いだったよ」

「本当ですよ。頭いいのに、なんで間違うのですか。あなたなら、あんなモンスターけちょんけちょんに出来たはずなのに」

「フィーナをすぐにでも助けたかった。傷つけたくなかったし、本気で俺の命程度で救えるなら安いと思ったんだけど」

安くはないと、私のそばにいたなら分かっただろう。間違っていたと彼は謝る。

「ずっと、泣いていたね。飲まず食わずで、俺の頭を抱えたまま。そんなに愛してくれていたんだ」

「嬉しさと悲しさが混じった顔をしてますよ」

「最初は嬉しかった。ここまで愛されていたんだと実感出来て。けど、すぐに悲しくなった。自身のしたことの罰がこれかと、泣く君に何も出来ないことが。君がずっと立ち直ることをしなかったから」

「他の方と付き合う気など毛頭ないので、山にこもるところでしたよ。私に触れてくれないのに、周りの男性絞殺とか酷いじゃないですか」

「俺だって、必死に触れようとしたんだ。けど、結果はこれ。肉体を手に入れなきゃ、声すらも届かないし」

体を寄せることも出来ない。
密着すれば、顔も近付く。自然と口付けを交わしそうになるが、サクスくんの体であることには違いない。

彼の方から、首を横に振った。

「なんだか、複雑な気分だ。フィーナに触れる男いるなら、八つ裂きにするつもりなのに。ああ、さすがにキスはしないけど。君に触れたこの手や腕の皮膚を剥ぐからもっとこうさせてほしい」

「そんなことをすれば、戻ったサクスくんが可哀想なのでダメですよー」

ふと、彼が私と距離を取った。

不思議そうな顔をされ、幼稚な子供でも見るかのように含み笑いをされる。

おかしい、と。

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