ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました

「え?あ、れ……」

「おはようございます」

「おはようございま、す……?」

あれ?あれ?と、体を起こすサクスくん。どこか痛むのか、眉を寄せていた。

「大丈夫?」

「へ、平気っす。クラビスさん、マジで強いんすね。あんまり強い奴だと、体力だけじゃなくて、体が軋むようなーーいてて。あー、でも、そっか。痛い、か」

感慨耽るような口振りで、サクスくんは己の手を見ていた。

「死んでないんすね、オレ。てっきり、終わりかと思ったのに」

自分の命が助かったのに大手を振って喜ばないさまは、以前の私と似ていた。

一度、死を覚悟し受け入れ、けれど、生き延びた。

「死に損なって良かったと、そのうち思えますよ」

「今は少し、罪悪感もあるっすけどね」

今度は私が涙を拭かれる番だった。

すみませんと、謝られる。

「何となく予想ついてました。フィーさん、優しいから、きっとオレを生かしてくれると。もしかしたら、クラビスさんが強情にも出て行かないことも考えてたんすけど。そんなになってまで、オレを助けてくれたんすね」

そんな謝罪には、気にしないでとしか返せない。

「サクスくんの犠牲なくても、彼を感じられるようになりますから」

「え、何か手でもあるんすか?」

「根性です!」

「……。クラビスさんは、愛の力で!と叫んでますけど」

「その二つがあれば、どんな難題も解決しますよ!」

「本気でそう思わせるお二人が凄いっす。にしても」

辺りを見回し、クモがいないことを確認するサクスくん。赤い幹が生い茂るさまを見て、唖然ともしているようだった。

「クラビスさんに乗っ取られた以降のことは記憶にないんすけど、よっぽどのことをしたみたいっすね」

「久々に容赦ないことをしていました」

「優しいフィーさんなら、やめてとか言いそうなもんすけど?」

「買いかぶり過ぎですよ。かけていい情とそうでないのは、きっちり区切っているつもりですから。それは彼も同じで、サクスくんが思っている以上に、クラビスさんは優しい人ですよ?」

「フィーさん限定じゃないんすか」

「そんなことありませんよ」

ほら、と指をさす。
サクスくんの目が大きく見開いた。

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