ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました

「分かった。俺の命一つで、彼女が助かるなら安いものだ」

「泣けるねー。ほら、さっさと死ねよ。ナイフぐらい、精製出来るだろ?な?お前は天から愛された夜空さんなんだからよぅ」

「よぞ、ら……?」

「フィーナ、そんな奴に構わないで、俺を見ていなよ」

彼の手には一本のナイフ。魔法で精製されたどんな物でも、必ず殺せる鋭利な刃物を一本握り、“笑う”。

「俺は、君のために死んでみせる。俺の死因が君のためだなんて、ああ、幸せだよ」


いつもの笑顔。愛を語る顔で、彼は言う。
日常的なことでもするかのように、こちらが止める間もなく。

「死ぬほど、愛しているよ」

彼は、己の首を胴体から切り離した。

横線一本の綺麗な断面図。普通のナイフでは有り得ない切れ味、何か仕掛けがあるんじゃないかと思わせる。

「う、そ……」

そうだ。仕掛けがあるんだ。こんなこと、あり得るわけがない。

「クラビ……ス、さ」

ごろりと転がる首。口元は笑顔のまま、今にもおはようって言いそうな。

「クラビスさん、クラ……っ」

こんな呆気ないことがあってたまるか。彼は強くて、私が知る限りとても強いのだから、こんな、こんな呆気なく、私のせいで死ぬなんて、だからっ、死んでないに決まって。

「クラビスさんっ、クラビスさんっ、あ、あああっ、いやああぁ!」

彼の名前を呼ぶ、何度も何度も。
悲鳴を上げるたび、背後の男が哄笑した。


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