ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました
「バッカじゃねえーのー!ハハハッ、女一人のために、あの、あのっ、よ、“夜空”がっ!くふっ、ひー、ひーっ、ハラいて!こんな、こんなあっさり、心臓食えるなんてっ!」
用済みとなったのか、三つ目が私を蹴飛ばす。倒れた先には、彼の血で出来た池。生ぬるく、作り物でないのが肌から伝わってきた。
声が出ない。声帯がめくりあがったかのように詰まって、叫ぶに叫べない。
彼の胴体に寄り添い、ゆすって見るも血が余計流れるだけで起きてはくれなかった。転がる首を抱きかかえても、目を覚ましてはくれない。あまりにも綺麗な断面だから、合わせれば元に……
「ありがとうなー!」
その断面に、三つ目の足が食い込んだ。
「本当、助かったわー。まじ、お前のおかげ」
穴ぼことなる彼の胴体。そうして、私に送られる感謝の言葉。
「楽して強くなれるわ、お前のおかげ。礼したいから、お前も呆気なく殺してやんよ。いい奴だろ、俺?今にも後追いしてーって言う女の介錯を買って出るんだからさー」
三つ目がしたいことなんて、分かる。
むしろ、そうなれと願い、逃げずに彼の頭を抱えたままでいた。
彼が死んだ途端に、私も殺されたようなものだ。認めるしかない、この理不尽を。
彼は、私のせいで死んだ。
そうして、私は、私自身のために死ぬ。
鎖がなくても、温かい手のひらがなくても、私は彼のそばから離れない。最後には必ず彼の隣にいるし、最期ともなればそれは。