ヒーロー(ヤンデレ)が死亡しました
「死にたくなるほど、愛してますよ」
残りの生涯は、全てあなたのために費やす。
彼が最期、笑顔だった理由が分かった。だって、今の私がそうだから。
彼とお揃いの顔で死を待ち望んでいたが、あるのは男の呻き声だった。
見れば、己で首を絞めている。
「な、んで、ぐぅっ!」
そんな不可解な行動の果て、己で首を絞めているわけではなく、首に絡みつく何かを取ろうと必死になっているのが分かった。
勘違いをしてしまったのも、男の首には何もないから。見えもしない、触れもしない物を男は取ろうと、喉元に手をやっている。
ついには、ナイフで喉に傷を作る行為に移ったが、結果は変わらず。“何か”は、男の首を骨が折れるまで締め上げた。
事切れた体は倒れる。そうして、残った死に損ない。ナイフがあった。彼がそうしたように私も習おうとしたのだが、出来なかった。
死ぬほど愛してくれた彼。その思いに応えたいのに、手が震えて取りこぼす。
死ぬほど愛してくれた彼。
死にたくなるほど愛した私。
私は、この程度にしかなれないのかと、彼の頭を抱いてむせび泣く。ごめんなさいと繰り返しながら。
死に損ないは、死ねない。
生き長らえたからこそ、この生に意味を見つけてしまった。
彼が、助けてくれた命。
それだけで、私はまだ死に損ないになる。
こんなみっともない姿でも、腕の中の彼は微笑みかけてくれていた。