2人きりのティータイムは、苦くて甘い。
けれど、資料を揃えるうちに重大な欠陥が発覚した。
最も大切な部分の前年度のデータが欠けていたからだ。
どうやら手入力で入れたデータは、古いハードディスクごと誤って消去し廃棄したらしい。必要な統計データを取得するためには何冊ものファイルの伝票が必要で、私は各課の課長に頭を下げて資料室の資料を手に走り回った。
(課長のためにも頑張りたい! 期待に応えなきゃ)
会議に使う資料の期限は3日間。朝も一時間と言わず早く来て作業し、夜もなるべく遅くまで残って数字を拾い上げる。ご飯を食べる間も惜しんで、ひたすらキーボードを打つ。
だんだん寒くなる職場でも、自分のわがままなのだからと暖房を使うのは勿体なくて控えた。冷え込みの中ストールを体に巻いて、震えながらなんとか完成させたら既に午前様。
頭がずきずき痛むのを押さえながらチェックした後保存して、課長にメールで送った後――突然ふわりと何かに包まれて驚いた。
香ったのは、いつの間にか嗅ぎなれた柑橘系のパフューム。
「終わったか?」
「は、はい……」
「行くぞ」
どこに、と訊く間もなく手を引っ張られて会社を出た。