2人きりのティータイムは、苦くて甘い。
やっぱりダメな私
「飲め」
「は……はい」
どうしてこうなった? と自分の中では疑問符がいっぱいで。なぜ、自分が課長のマンションにいるのか。課長の大きなコートに包まれたままでいるのかという現実が飲み込めない。
無言のまま課長にマンションに連れて来られた私は、ダイニングらしいテーブルでマグカップを渡された。おずおずと口にすると、フルーティな味と香りのお茶でとても飲みやすい。
「エルダーフラワーのハーブティだ。風邪には効くから体が楽になっただろう?」
課長に言われて、そういえば体がぽかぽかと暖まり、痛んだ喉や頭痛が和らいだ気がした。
「はい」
けれど、どうして課長は私が風邪を引いたと気付いたんだろう? まだ熱が出たり咳が出たりしたわけでもないのに。
「頑張るのはいいが、根を詰めすぎるな。体調管理も社会人の大切な仕事のうちだぞ」
以前と変わらない厳しい口調に思わず彼を見上げると、眉間にシワを寄せて睨まれた。思わず俯いて唇を噛む。
やっぱり私は頑張ってもダメなんだなあ……とじわりと滲んだ涙を拭おうとした瞬間。
グイッと体が傾いて、頬に硬い感触を感じた。