あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
それは大事な命が掛かっているから。
知ってしまった今、私の心に一つの思いが浮かぶ…。フランスには私が行くべきだと。
「所長。フランス留学は中垣先輩に決定ですか?」
「まあ、決まってはいるが、変更できないこともない」
「決定はちょっと待って貰えますか?」
「え。坂上さんが行くの?」
「いえ。あの。中垣先輩と話したくて」
所長は私の気持ちを分かってくれたのだと思った。優しく頷くと穏やかな声を出したのだった。
「そうだね。話した方がいいかもしれないね。中垣くんは気持ちが優しい男だけど、自分の気持ちには素直にはなれないようだ」
所長とはその後も色々な話をしたけど、そのどれもがさっきの衝撃を打ち消すことは出来なかった。食事を終えて、所長と別れると私はすぐに研究室に戻ることにした。廊下を走るわけにはいかないけど、息が少し切れる。研究室に入ってきた私を見て、中垣先輩は訝しげな表情を浮かべた。鋭い視線は私に向けられている。
「何かあったのか?」
「先輩のお祖母さんの話を聞きました」
私がそれだけ言うと、中垣先輩はパソコンの方に視線を戻す。そして、何事もなかったかのようにキーボードの上で指を動かしたのだった。
知ってしまった今、私の心に一つの思いが浮かぶ…。フランスには私が行くべきだと。
「所長。フランス留学は中垣先輩に決定ですか?」
「まあ、決まってはいるが、変更できないこともない」
「決定はちょっと待って貰えますか?」
「え。坂上さんが行くの?」
「いえ。あの。中垣先輩と話したくて」
所長は私の気持ちを分かってくれたのだと思った。優しく頷くと穏やかな声を出したのだった。
「そうだね。話した方がいいかもしれないね。中垣くんは気持ちが優しい男だけど、自分の気持ちには素直にはなれないようだ」
所長とはその後も色々な話をしたけど、そのどれもがさっきの衝撃を打ち消すことは出来なかった。食事を終えて、所長と別れると私はすぐに研究室に戻ることにした。廊下を走るわけにはいかないけど、息が少し切れる。研究室に入ってきた私を見て、中垣先輩は訝しげな表情を浮かべた。鋭い視線は私に向けられている。
「何かあったのか?」
「先輩のお祖母さんの話を聞きました」
私がそれだけ言うと、中垣先輩はパソコンの方に視線を戻す。そして、何事もなかったかのようにキーボードの上で指を動かしたのだった。