あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
着替えてからおいでとはいうけど、本当にどうしたらいいのだろう。小林さんは本気でお昼寝をするつもりみたいで、その体制になりつつある。今更、どうしようと言っても『お昼寝』は決定事項のようなものだった。

「はい」


 躊躇してしまうけど、とりあえず着替えを終わらせて、小林さんの寝ているベッドの端に自分の身体を滑り込ませたのだった。婚約してこんな風に並んで寝るというのは緊張する。



「抱っこするくらいはいい?」


 私は頷くと小林さんはゆっくりと腕を伸ばし私の身体を包んだ。そして、額にゆっくりと唇が落とされた。



「おやすみ。美羽ちゃん」


 もしかしてこのまま寝る??


 緊張はマックスなのに、少し見上げると小林さんの端正な顔は瞳をしっかりと閉じられている。本気で寝るようだった。


「…おやすみなさい」


 小林さんの腕に包まれていた私はゆっくりと眠りに落ちていく。ずっと寝れなかった分、私の眠りに落ちる時間はあまりにも短かったように思う。小林さんはゆっくりと髪を撫ででくれていたのは覚えている。でも、その記憶も曖昧で…。


 私が目を覚ましたのはそれからかなりの時間が経ってからだったと思う。私が小林さんのベッドに寝た時はまだ、遮光カーテンの隙間から明るい陽射しが差し込んでいたが、今はそんな光も見えない。身体を起こすと、私の腰の辺りに小林さんの腕があって、あのまま本当に寝てしまったみたいで、小林さんはまだぐっすりと寝ていた。

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