あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 月曜日の朝は思ったよりもスッキリ起きられたと思う。小林さんに別れを言わないといけないと思っていた胸の痛みが消えたけどこれからのことに不安も感じる。でも、小林さんと一緒に過ごした時間の中で私の中で微かに動いたものもある。


 今日、私は自分でフランス留学に行くと所長に言うつもりだった。元々、中垣先輩ではなく私が行くはずだったフランス留学だから、何も問題なく変更をすることは出来るだろう。


 左手の薬指の光は私を勇気付ける。自分の手を握ると感じる指輪の感触が私の心を支えていた。この指輪を、そして、小林さんを信じて私はフランス留学するつもりだった。


 いつもと同じように起き、用意を終わらせた私はいつもと同じように研究所に向かう。そして、研究所にはいつもと同じように中垣先輩がいて、パソコンの前で難しい顔をしていた。


「おはようございます」

「ああ。おはよう」

「あの…。お話があるのですが」


 私がそういうと、中垣先輩は指を動かすのは止めずにチラッと視線だけを私に向けた。今は手が離せないというところだろうけど、それでも私の話を聞いてはくれるみたいだった。耳を傾けてくれることは分かる。そして視線を感じた。


「なんだ」

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