あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「え?」


「今日はギリギリまでこうしていたい。朝ごはんは駅前のカフェでいいよね。」


 こんな風に甘えてくる小林さんに驚きながらも可愛いと思ってしまう。昨日の夜の小林さんと本当に同一人物かと思わせるくらいの甘えた声を響かせていた。でも、どちらも私の心を捉えるのには違いない。



「朝ご飯は和食でお味噌汁とかが好きかと思ってました」


「ん。それは明日でいい。今は美羽ちゃんとこうしていたい」


「え?明日?」


「俺、美羽ちゃんがフランスに行くまでの間、ずっと一緒に居たいと思っている。昨日考えたけど、美羽ちゃんとの時間が短いなら、それを全部俺に頂戴。俺の部屋に引っ越しておいでよ。会社も俺の部屋から行けばいいし、フランスも俺の部屋から行って、俺の部屋に帰ってくればいい。」


 あまりにも突飛な発想に声を失う私がいる。確かにフランスに行くまでの時間は短いから、出来るだけ小林さんと一緒に居たいと思っていた。でも、小林さんは私の考えの上を行く。


 一緒に住むなんて思いもしなかった。


「でも、迷惑ではないですか?仕事遅いし。それに引っ越してもすぐにフランスに行かないといけないし」


「だからだよ。美羽ちゃんを俺が独り占めする。それくらい俺に許してくれていいでしょ」


 今まで人よりものんびり過ぎていた私の人生は本社営業一課に転属してから、急激に変わっていく。初恋の人が長い月日を越えて彼になってくれたのに、それから今は婚約者になって…今度は同棲する。
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