あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
「本当に美味しい。私もこの味、好きです」


「ならよかった。ここのクロワッサンは店で朝から焼いているから特に美味しいと思う。でも、好みって人によって違うから、朝はこの店で殆ど食事をしているの。だから、美羽も気が向いたら一緒に」


「はい。嬉しいです。毎日というわけにはいかないけど、出来れば一緒に」


「翔も来るわよ」

「え?」

「翔もこの店の常連なの。だから、一緒になったら朝ご飯も一緒とあるけど大丈夫?実は私、知ってるの。翔が美羽のことを好きだってことも。プロポーズしたことも知ってる」


 キャルさんはどこまで知っているのかとは思ってたけど、キャルさんはプロポーズまで知っていた。


「美羽が今の婚約者を選んで、翔のことを断ったことも知っている。でも、翔はあんなに必死に空港で走っていたし、昨日も美羽のために色々としていたでしょ。だから、美羽にも聞いておこうと思ったの。今の翔との関係。私といる限りというか、フランスに居る限りは翔と一緒になることは多いと思う。だから、美羽はどう思って翔の傍に居るの?」


 キャルさんの言葉に私は何と応えたらいいのだろうか?折戸さんの事は嫌いじゃない。むしろ人間的には好きだし、尊敬もしている。でも、客観的にみたら…。私は折戸さんの傍に居るべきではないとも思う。


「俺がそれでいいって思っているからそれでよくない?」


 少しおどけたような明るい微笑みを浮かべながら、私とキャルさんの座っているテーブルの空いた席に折戸さんは座ると、トレーに載っていたコーヒーを口に運んだのだった。

 
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