あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 所長への挨拶を終わらせて、私はキャルさんに連れられて今から自分が過ごす研究室に連れて行かれた。重厚な外観とは反しての最新鋭の機器の納められた研究室は静岡研究所を思わせた。機器が全てとは言わないけど、それでも最新鋭の機器が揃うのは研究者としては嬉しいものだった。


 静岡研究所は最新鋭の機器を揃えていたのとここもほぼ同じようなものが揃えられている。それにはホッとしたのも事実だった。使用法などのマニュアルはフランス語で書かれたものしかないだろうから、使い方から勉強するということはないようだった。


「よかったです」


「なにが?」


「ここの機器の使い方を最初から勉強するためにフランス語の辞書を引かなくて済みそうで」


「その時は私が教えるわよ。さ、今の研究の資料を美羽の使うパソコンにデータを送っているから、今日のところはそれを確認しておいて。私は自分の仕事があるから」


 そう言ってキャルさんの座った席の横が私で書類と書物に覆われて、今にも落ちて来そうなデスクの横にはパソコンだけが置かれたデスクがある。デスクの下には私が日本から送った段ボールが置いてある。私は先にパソコンの電源を入れるとキャルさんから送られたと思われるファイルを開いた。


 その中身は私が日本で研究していた内容とは全く違う分野の物で、もしかしたら関連付けたもの研究出来るのかもしれないという私の甘い目論見は簡単に砕かれた。
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