あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
食事が終わってから正式に始まったのは研究資料との格闘だった。辞書を片手に内容を読み解いていく。そんな中でも分からないことがあれば、キャルさんに質問する。慣れるのが一番大事だと思ってはいるものの焦る。溜め息を飲みこみながら読み進めていくと、少しだけ内容が分かってくる気がした。
それは資料を読み始めて、しばらく経ってからだった。
日本の静岡研究所もフランスのパリ研究所も、元は一つの会社で、その新製品などの開発をしているのは変わらない。いくつかの部門があり、その、中で分業されているだけ…。使っている言葉は違っても、実際にはどこかで研究は繋がっている。
「美羽。そろそろ終わりにしない?続きは明日にしよ」
そんなキャルさんの声にハッとして時計を見ると、既に定時は軽く過ぎていた。日本では研究所に住んでいるかのような中垣先輩と一緒に仕事をしていたけど、ここは違う。いつまでも、夜中までもというのはないのかもしれない。その証拠に研究室内には殆どの人が帰宅した後だった。
「すみません。資料と論文を読んでいると時間が過ぎてしまいました」
「その気持ちは分かる。でも、赴任一日目から残業はね。さ、今日は帰りに飲みに行きましょ。私のお気に入りのお店に美羽を連れて行きたいけどいい?」
「はい」
赴任第一日目はキャルさんの誘われて始まり、キャルさんに誘われて終わる。
もちろん、連れて行ってくれたお店は美味しかったし、キャルさんとの時間は楽しかった。こうして、私のフランスでの生活が始まったのだった。
「どうにかなるものよ。美羽、一人じゃないでしょ」
何度も繰り返された優しい言葉がそこにはあった。
それは資料を読み始めて、しばらく経ってからだった。
日本の静岡研究所もフランスのパリ研究所も、元は一つの会社で、その新製品などの開発をしているのは変わらない。いくつかの部門があり、その、中で分業されているだけ…。使っている言葉は違っても、実際にはどこかで研究は繋がっている。
「美羽。そろそろ終わりにしない?続きは明日にしよ」
そんなキャルさんの声にハッとして時計を見ると、既に定時は軽く過ぎていた。日本では研究所に住んでいるかのような中垣先輩と一緒に仕事をしていたけど、ここは違う。いつまでも、夜中までもというのはないのかもしれない。その証拠に研究室内には殆どの人が帰宅した後だった。
「すみません。資料と論文を読んでいると時間が過ぎてしまいました」
「その気持ちは分かる。でも、赴任一日目から残業はね。さ、今日は帰りに飲みに行きましょ。私のお気に入りのお店に美羽を連れて行きたいけどいい?」
「はい」
赴任第一日目はキャルさんの誘われて始まり、キャルさんに誘われて終わる。
もちろん、連れて行ってくれたお店は美味しかったし、キャルさんとの時間は楽しかった。こうして、私のフランスでの生活が始まったのだった。
「どうにかなるものよ。美羽、一人じゃないでしょ」
何度も繰り返された優しい言葉がそこにはあった。