あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
『美羽。今日はどうだった?

 俺は明日から本社営業一課に行ってくる。二泊三日の短期出張だよ。
 
 詳しくは分からないけど、高見主任がかなり大きな仕事を成約出来たらしい。その件で、静岡支社もその手伝いをすることになったんだ。凄いとは思うけど、あそこまで来ると何か神憑り的なものを感じるよ。地道な努力といっつもいうけど、それだけじゃないと思うんだけど。

 でも、久しぶりに高見主任に会うから、美味しいものをご馳走して貰ってくる。美羽が頑張っているから、俺も頑張る。キャルさんと折戸さんによろしく。

 じゃ、またね』


 メールには小林さんの日常が詰まっている。そんな日常に触れる度に嬉しいと同時に会いたくなってくる。私の日常と小林さんの日常は…今は重なり合うことはない。時間も距離も離れたまま。


 この一年という月日は研究に没頭している時間を過ごしていた。キャルは私が思う以上に優秀な研究員で、仕事の面では中垣先輩を思わせた。彼と違うのは社交的なところだと思う。キャルの傍に居る私の周りにも人はたくさんで研究の合間に一緒に食事をする人も増えていた最初はキャルを囲んでの食事だったけど、たまには私個人だけでも他の人と食事をする。


 慣れなかったフランス語も住んでいるとそれなりに話せるようになるもので、キャルと研究について話す時も日本語よりもフランス語で話すことが増えた。今の生活は充実している。研究も生活も楽しい時間を過ごすことが出来ていて、それなりの成果も上がっている。


 だけど、小林さんとはメールと電話だけで、一年経った今でもまだ会うことが出来てなかった。

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