あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 自分の目が可笑しくなったかと思った。勿論、目もだけど、思考もフリーズしている。何がどうなったらこのような状況になるのだろうか?


 折戸さんの見送りに来た私は泣かないように必死だった。それは泣いてしまったら…泣き顔を見せてしまったら優しい折戸さんはきっと私のことを心配してしまうだろう。もう、搭乗が始まり泣かずに過ごせたと思った瞬間だった。目の前にいるのは会いたくて堪らなかった人。今は驚きすぎて声が出ない。


「折戸さんも高見主任も甘いですよ。本当に。でも、そのお蔭で俺は嬉しいですけど」


 会わなかった時間は一年くらいなのに、小林さんは爽やかな声はそのままで雰囲気は落ち着きを見せている。そして、大好きだった笑顔を私に向けるのだった。胸が苦しくなるほど、会いたかった人が目の前に居て、それが現実なのかさえを自分では判断できそうもない。


「小林さんなの?」


「そうだよ。美羽ちゃん。久しぶりだね」


「あ、はい。あ、あの、折戸さん。知っていたんですか?」


 折戸さんの方を見ると穏やかで優しい微笑みを私にくれる。それだけで十分な答えだった。空港まで見送りに来るのは折戸さんの中では折込済み。で、ここに小林さんが来るのも折込済み


「さてと、俺は搭乗しないと飛行機に乗り遅れるからもう行くよ。美羽ちゃん。また。今度は日本で会えるかな。蒼空は研修が終わって、日本に帰国したら連絡しろ。日本に帰国したら飲もう」


「え、あの。はい。折戸さんも気を付けて」


「高見主任によろしくお願いします」


 私と小林さんが口々にいうと折戸さんはニッコリと笑う。穏やかな微笑みは私に向けられ、優しい眼差しが降り注ぐ。


「日本なんて近いから。じゃあ、また」





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