あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 サイズの確認をして、私と小林さんの指のサイズに合わされた指輪は小林さんの帰国までには出来るようだった。指輪一つだけど、一つ一つ小林さんとの結婚に近付いているような気がする。結婚はまだ一年も先のことなのに気持ちは高鳴る。 


「気に入るのがあってよかった。さっきの指輪は美羽ちゃんによく似合っていた。婚約指輪とはまた違う感じがするよ」


 メトロに乗って私と小林さんはパリの郊外に向かっていた。本当なら昨日行くはず観光地に今から回ることになっている。メトロでフランス支社の近くまで行き、それから、支社が用意してくれた車に乗って観光することになっていた。私はこのままメトロでいいと言っていたのだけど、小林さんは自分で運転するという。


 車での移動となると色々な場所に行けるし、買いたいものもメトロに乗って帰ることを考えずに買うことが出来る。でも、その反面、小林さんに運転という負担を掛けてしまう。


「私はメトロでもいいですよ」


「でも、俺。行きたい場所は有名な観光地だけではないから、車があった方が都合がいいと思う。美羽ちゃんは俺の運転怖い?」


「そんなことはないです」

「なら、車で動こう」


 フランス支社で車を借りると、それと一緒に支社の人が地図を渡してくれて、そこには見慣れた折戸さんの字で細かく書き込まれていた。折戸さんは車でよく動いていたから、その時に使っていたものだろう。日本語で書き込みがされていた。


「折戸さんのここで使っていた地図なんだろうね。これなら迷わずに色々な場所に行ける」

「はい」

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