あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 媒体を丁寧に確認した後に所長に報告すると、すぐにレポートにまとめるように指示をされた。所長も私とキャルの研究成果には満足らしく、何時もの厳しい顔の眉間の皺が少しだけ緩んでいた。


 私とキャルの研究成果を纏めたレポートはやがては新製品の開発に大きなものとなる。二人で頑張って成果を挙げれたのは嬉しいことでしかない。でも、レポートを書きあげるのには多大な時間が掛かり、最後のレポートを書き上げたのはキャルの結婚式の二日前。


 結婚式前のエステも何もかも放置状態。新居のことは新郎の彼にお任せ。結婚式の準備があるだろうからとキャルに言っても聞かなくてギリギリまで一緒に仕事をしていた。最後の一字を書き上げた時は二人で抱き合って喜んだ。


 これが一緒に出来る最後の研究と思うと流れる涙を抑えることが出来なかった。これから一人でやって行けるかとの不安もあるけど、頑張ろうと思う。


「ありがとう。キャル。キャルのおかげで頑張れた。この研究はこれから製品化されるまで私、頑張るから」


「私も美羽がいたから最後の研究を終わらせることが出来た。自分一人だったら絶対に中途半端なままで終わったし、きっと、いつまでも最後まですればよかったと後悔したと思う。でも、ここまでやれたから満足。これで心置きなく結婚できるわ」


「結婚おめでとう。キャル…幸せになって」


「ありがとう。美羽。美羽も後一年で日本に帰国でしょ」


「うん」

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