あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 結婚式の前の晩はキャルは家族と過ごすというので、今日が二人で過ごせる最後の日。


 予定では美味しい料理を用意してとか思っていたけど、ギリギリまで研究をしていたから、テーブルに上っているのは、近くの店で買ってきたデリ。それと、とっておきのシャンパンを開けて、キャルのこれからの人生を一緒に祝うことにした。研究が一段落しているからか、キャルはスッキリとした表情を浮かべていた。


「お疲れ様」

「お疲れ様」


 たくさん話したいことはあるけど、何を話していいか分からないうちにシャンパンの甘い酔いに巻かれていく。そして、話題はいつものように研究の事。いくら一段落したとはいえ、これはまだ通過点というのを私もキャルも知っている。これをもう少し洗練させ、いくつかの媒体だけの成功事例ではなく、もっと確実に成功事例を増やしていかないといけない。


 二人で話すのはやはり研究のこと。研究に情熱を注いだ分、成果について二人で盛り上がる。

 明日はキャルは家族の元に帰って、明後日は結婚式なのに、ずっと、私の傍に居てくれそうな勢いだった。


「そろそろ寝ようか」


「そうね。私のベッドは狭いわよ」


「いい。美羽が落ちなければ」


 二人で私の狭いベッドに入ると静かに目を閉じた。ここの所、寝不足な上に昨日は徹夜だった。そんな私とキャルに一番の誘惑は温かいベッド。二人でベッドに潜り込むと競争する間もなく目蓋は落ちてしまった。


 人の温もりを感じ、優しさを感じ。私は眠りに就く。

 もう、時間は日を越えて、キャルが研究所で挨拶をしてから、家族のいる家に戻る日になっていた。

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