あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
その日は曇天だった。この時期は晴れた日が多いというのに、今日は朝から、残念なくらいの曇天で気持ちも落ち込んでいく。いつも通りに入った研究室にはまだ誰も居ない。コーヒーメーカーのコポコポという音とパソコンの起動音だけが響いている。
キャルの後にこの研究室に入るはずの人のチームの研究が頓挫していることから始まった。始まるはずの研究はまだ始まっていない。あれから二週間。私はまだ新しい研究に入れずにいた。仕方ないと分かっているけど焦る気持ちはあって、私が日本に帰国までには研究成果を挙げるのは厳しくなりそうな気配だった。
「美羽。所長が部屋まで来て欲しいって」
ちょうどコーヒーが出来上がり、マグカップに入れようとした時に隣の研究室の子が知らせに来てくれた。所長はとても忙しい人なので会う機会は殆どない。真面目な人柄もあってか、会う度に重厚な雰囲気を感じてしまう。融通が利くタイプではないのは分かっている。でも、威圧感も拭えない。
「何の用事か聞いている?」
「ううん。何か書類を見ていたけど、普通だった感じだけど」
「そうなの?なんだろ?」
「新しい研究の事じゃない?遅れているチームもそろそろ目処がついたってさっき聞いたから」
「わかった。わざわざありがとう。行ってくる」
研究所長室に呼ばれた私は真っ黒な革張りのソファに座らせられ、目の前にコーヒーを出された。まさか自分の研究室ではない場所でコーヒーを飲むことになるとは思いもしなかった。
キャルの後にこの研究室に入るはずの人のチームの研究が頓挫していることから始まった。始まるはずの研究はまだ始まっていない。あれから二週間。私はまだ新しい研究に入れずにいた。仕方ないと分かっているけど焦る気持ちはあって、私が日本に帰国までには研究成果を挙げるのは厳しくなりそうな気配だった。
「美羽。所長が部屋まで来て欲しいって」
ちょうどコーヒーが出来上がり、マグカップに入れようとした時に隣の研究室の子が知らせに来てくれた。所長はとても忙しい人なので会う機会は殆どない。真面目な人柄もあってか、会う度に重厚な雰囲気を感じてしまう。融通が利くタイプではないのは分かっている。でも、威圧感も拭えない。
「何の用事か聞いている?」
「ううん。何か書類を見ていたけど、普通だった感じだけど」
「そうなの?なんだろ?」
「新しい研究の事じゃない?遅れているチームもそろそろ目処がついたってさっき聞いたから」
「わかった。わざわざありがとう。行ってくる」
研究所長室に呼ばれた私は真っ黒な革張りのソファに座らせられ、目の前にコーヒーを出された。まさか自分の研究室ではない場所でコーヒーを飲むことになるとは思いもしなかった。