あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 このドレスを選ぶまでの苦労は結構なものだった。


 何度目かのドレスの試着は淡々と行われ、色々着てみてという小林さんととりあえず飾りの少ないものを選ぼうとする私の間の攻防が行われた。どれを着ても『綺麗』と『可愛い』を連発する小林さんにドレスを着せてくれる係の人はニッコリと笑っている。係の人にしてみれば、早く決めてくれと思っていることだろう。


 白のドレスだけでも既に六枚目だった。着るのは一枚なのに、何枚も何枚も着るのが申し訳ないように思う。でも、親身になって準備をしてくれるから、私も何度もドレスに手を通す。


「そんなに恥ずかしがらなくてもいいですよ。彼氏さんが絶賛するのはよくあることですから。では、こちらのドレスも着てみましょうか。こちらは形はシンプルですが、布地の模様が凝っているので、実際にライトを浴びたらとっても綺麗に見えると思います。教会の式は肌を見せないようなものを着るようにはなってますが、近年ではその辺りは曖昧になっています。

 ですので、こちらも教会のお式では着られることが多いです。ですので、坂上様がお好きなものを選ばれていいです。お待ちになっているので急ぎますね」


「はい」


 結婚式というのは色々決めないといけないのだけど、私と小林さんは思ったよりもスムーズに決まった方だと思う。式場はあの時の教会。披露宴は親しい人だけを集めてのレストランでのガーデンパーティ。招待客も決められた人だけ。


 それでよかった。
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