あなたと恋の始め方②【シリーズ全完結】
 嫌いではないけど、緊張する。どんな話をしたらいいのか分からないし、研究の成果くらいしか共通の話はない。でも、この所長は研究の話はあまりせずに普通の会話を好むから困る。距離が取りにくいと私は思っていた。


「はい」


 なんて話をしていいのかわからないけど、とりあえず所長の顔を見ると、所長はニッコリと微笑んだ。


「この頃頑張っているみたいだね。中垣くんからも報告を貰っているが、どうやら本社にもいい報告が出来そうだ」


「だと、いいのですが」


 今日は珍しく研究の話だった。研究成果だったら私も緊張せずに話すことが出来ると思った。


「経過を見せてもらったけど、ほとんど出来上がっているも同様な状態だね。この短期間にここまで頑張ったと思っているよ。でも、中垣くんがフランスに行くとは思わなかったな」


「そうですよね。中垣先輩がここから抜けると厳しいですね」


「まあ、確かにそれもあるけど、確か彼のお祖母さん。具合が悪かっただろ。だから、研究所としても坂上さんを推薦したんだけど、中垣くんが自分で行くと言ってね」


「え?」


「あれ?知らなかった?中垣くんのお祖母さんはこの先に総合病院に入院しているんだよ。一度かなり悪かったみたいだけど、少し持ち直しているとは言っていたな」


 私は所長の話を聞きながら…。足下がグラグラ揺れるのを感じた。中垣先輩のお祖母さんの具合が悪いなんて知らなかった。

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