君と出逢えたこと
今は考えても無駄な気がした。



こんな二人きりの空間で、冷静に考えられるとは思えなかった。



今日は答えを濁したまま、今を楽しんで帰ろう。

直ぐに忘れるし何も無かったようになる。



そう自分に言い聞かせて私はカラオケに集中することにした。



そしてよくよく聞いてると、トシくんは洋楽ばかり歌ってた。



全然解らない。



聞いたこともない曲ばかりだった。



「ねぇトシくん、日本の歌は知らんの?」


「聞いた事はあるけど…下手やから…」



知らないわけじゃないみたいだった。



「じゃあさ、等身大のラブソング知ってる?」


「有線で聞いた事はある…かな…」



バイト先でも有線でよく流れてる歌を聞いてみた。



「あれ歌ってよ!私の大好きな曲!歌ってくれたらご褒美あげる」

「マジ!?じゃあ歌う!」

「うん!」



それからトシくんは硬直したまま、真剣に歌ってた。



綺麗な顔…

白い肌…

外人さんみたい…

笑顔なんか最高…



「歌ったよ!ご褒美!」

「え?」



ヤバ!見とれてて聞いて無かったよ。



「わかった。ありがとう!ご褒美は何がいい?」

カラオケの本を捲りながら聞く私。



「キス!」

「えっ?」



驚いてトシくんを見た瞬間…

二人の唇は重なってた…

凄く優しくて心地良くて癒されるキスだった…



「トシくん…」

「やったね!キスゲット!ゆきちゃん…二番目でいいから付き合って下さい」



私はコクンと頷いてた。
< 13 / 28 >

この作品をシェア

pagetop