君と出逢えたこと
バイト先ではもうすっかり公認の仲だった。



私より年上の主婦がほとんどだったからか、可愛いトシに惚れられてと皆が羨ましがってた。



平凡な主婦の妄想する夢物語がここにある、みたいな感じに思えたのかもしれない。



からかいながらもみんなトシを応援してた。



本気で応援してるわけではないだろう。



所詮主婦の気紛れ。



遊びで終わる恋。



だからこそ今を頑張れという意味での応援だったのかもしれない。



それでも私はバイト先が居心地が良く、凄く幸せな毎日が続いてた。



トシは私と朝方まで過ごした後はよく更衣室に泊まってた。



私は帰るのが面倒くさいからだと思ってた。



「トシ、帰って寝やんと風邪ひくよ?」



気になった私はトシに声をかけた。



「俺の親…ちょっと変わってるから…それに俺は出来損ないの烙印押されてるから…」



そう言いながらトシは起き上がった。



「トシ…」

「俺のやる事、全部否定されんねん…俺なんかおらんでもいい…妹がおるしな…あんな奴ら親とも思って無いし」



少し淋しそうに言ってた。



そんなトシを胸に抱いて髪を撫でてあげた。



実際夜中に迎えに行ってもトシは二階の窓から出て来て、朝方家まで送っても、玄関の鍵は閉まってて、インターホンを鳴らしても出てきてはくれなかった。



家の鍵は持たせてはくれてなかった。



放置なのかと思ったけどトシのやる事全てに口出ししてくるらしい…



これって放任主義とはまたちがう感じやし…



ちょっと疑問に思いながらも家に入れない日は更衣室で寝る日が続いた。
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