君と出逢えたこと
トシの親のやり方は私には理解出来なかった。



男の子の親とはこんなものなのか…と思ったりもしたが、それでも理解に苦しんだ。



放任主義なのかとも思ったがこれはむしろ過保護と言うべきかもしれない。



もう19才なのに合鍵も渡さず、夜のバイトからの帰りでも鍵を閉められてて家に入れない事が幾度とあった。



そんな時はメールが来て、更衣室に居るからと言ってた。


だから更衣室での寝泊まりが続いた。



そして朝になって帰ると家に入れてもらえるという日々だった。



私の気持ちはトシにどんどん夢中になり、本気で愛し始めてた…



トシの親もとっくに私の存在に気付いてた。



当然激怒…



何度も電話で罵られた…



「もう30のババァが年下たぶらかして!家族もあるのに淫乱女!」



凄く辛かった…



「おかん!いい加減にせぇよ!お前に何が解るんや!俺が先に惚れたんじゃ!ゆきを悪く言うのだけは許さんぞ!」


耳を覆いたくなるようなトシと両親との責め合い。



「目を冷ましなさい!たぶらかされてるだけやないの!そんな年増に!」



「ざけんなクソババァ!誰が年増や!もうお前なんか二度と親とも思わんわ!」



そうやってなんどもぶつかってた…



どうやって調べたのか、トシの携帯を見たのだろう。


私の携帯に直接かけてきて嫌味を言う事もあった…



たぶらかしてなんかない!


ふざけてもない!


真剣やのに…


トシも私も真剣やのに…



そう叫びたい衝動にもなった。



だけどそんな事言っても家族持ちの私じゃ説得力も無かった…



周りから見ても私が年下のまだ子供の男の子をたぶらかして遊んでるとしか見えないだろう。



真剣ですなんて言葉は口が避けても言えなかった。



だってこれは不倫で二股してるのは私だ。



その事実がトシを想えば想うほど重くのしかかった。
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