君と出逢えたこと
「もしもし。初めまして。篠田俊弘と言います。すみません。俺が無理矢理しつこく言い寄りました」



電話越しに声が聞こえた。


「お前、どこまで本気や。こいつらと将来考えてるんか」



え…?



将来…?


そんな話なんてした事無い。


トシ…



「はい。俺が責任取ります。取らせて下さい!必ず幸せにしますから!苦労させませんから!」



ハッキリとした口調でそう聞こえてきた。


トシ…ありがとう。

トシは逃げなかったね。

なのに後悔してしまった私は…。



私は自分が情けなくて涙が溢れて止まらなかった



トシの気持ちも、主人の気持ちも私は裏切ったことになる。



「19才のガキに何が出来んねん!親にも認めて貰えるわけ無いやろ!甘いんじゃ!」



主人は少し興奮した声で答えた。



「学校は辞めました!バイトも増やします!俺…俺は真剣です!」

「真剣?お前はどうしたいんや」



「お願いします。ゆきさんと娘さんと一緒にさせて下さい!」



トシは本気なのかな…



私はこのまま離婚するのかな…



まだ考えがまとまらないまま主人とトシくんの話が進んでいくのを黙って聞くしかなかった。



「嘘ちゃうな?本気なんやな?こいつらに苦労させへんて約束出来んのか」



「します!約束します!俺がしつこく言い寄ったんです!ゆきさんはそれに応えてくれた…だから絶対に苦労はさせませんから!」



主人は少し黙った。


でもかなり落ち着いた様子だった。


「人の嫁に手を出す奴は信用出来ん。でもお前の言いたいことはわかった。後はこいつと話し合う」



そう言って主人は俯いたまま私に携帯を渡した。
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