君と出逢えたこと
「トシ、待たせてごめんね。正式に離婚することになったよ。」

「うん…。ごめんな」


「トシが謝る事じゃ無いから。」



私もトシも元気はなかった。



「俺…俺本気やから。頑張るから。ゆきを幸せにするから!」



突然トシが声を張り上げて言った。



でも…。


「トシ…私はね…うつ病で買い物依存症で借金もある。それに養育費も貰わないし貯金も無い。引越し費用や家財道具も何もかも借金せなあかん。だからね、トシには苦労させたく無いからトシは両親と暮らして」



私は冷静に現実を話した。


「迷惑じゃない!苦労かって平気や!俺がそうしたいんや!な?ゆき!二人で力合わせていこう!」


「でも…でもね?」


「ゆき!頼むから!」



トシは必死にくらいついてきた。



「トシ…ご両親は?どうするん?」



「ええねんて!あんな奴ら!親かゆきかどっちか選べってなら、俺はゆきを選ぶ!」

「トシ…」



私は涙が溢れてきた。


ほんとはトシと暮らしたいんだ。


でも不安もある。



だけど二人で協力すればなんとかなるだろうか。



私はトシと新しい生活を始めていいのだろうか。



「トシ…ありがとう。二人で…頑張っていこうね」



悩みながらも私の口からはそんな言葉がこぼれ出た。


「よし!じゃあ明日から早速色々決めていこか!新婚生活やで、ゆき!」



新生活か…。



「うん。子供もいるし、しっかりせんとね」

「そうやで!俺が付いてる!」

「うん。ありがとう。じゃあ明日」



これでいいんだ。


「ゆき!落ち込むなよ!俺…ゆきを愛してるから」

「トシ…。私も愛してる」



そうして静かに電話を切り、これでいいんだと自分に言い聞かせながらも涙が止まらず、声を押し殺して朝まで泣いた。
< 28 / 28 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop