俺様御曹司と蜜恋契約
「いらねーよ。使わなかったならそのまま金はお前にやる」

「そういうわけにはいきません」

ただで5万円も貰うなんてそんなことできない。お返しします。ともう一度強く言ってからそれを取りに行こうとしたけれど、手首を葉山社長に掴まれたままなのでソファから立ち上がることができない。

「ところで今日俺ん家こない?」

お金の話から話題をそらされてしまう。

「また飯でも作ってよ。花の作る料理うまいからまた食いたくて」

「……」

「そうだなぁ。今度は肉じゃが食いたい」

行くなんてまだ返事をしていないのに料理のリクエストしてくる葉山社長から私を視線をそらした。それからぼそっと小さな声で告げる。

「あの人に作ってもらえばいいじゃないですか」

「あの人って?」

「この前の人ですよ」

「この前?」

葉山社長は首をかしげるけれどしばらくして思い出したのか「もしかしてマミのこと?」と金曜日の夜の女性の名前を口にする。

「あいつはダメだ。料理できねーもん。あいつとはいつも俺が飯奢ってやってそのあとはホテルで……ってそこまで言わなくていいか」

葉山社長が口を閉じる。

やっぱり葉山社長とマミさんはあのあと2人でホテルに行ったのかな…。別にそんなこと私には関係ないことなのに不機嫌になってしまうのはどうしてだろう…。

「すみません。今日は用事があるので行けません」

用事なんて何もないけどついそんなウソが口から出てしまった。するとそんな私のウソがバレたのか葉山社長の視線が鋭く変わる。

「なんの用事?」

「あなたには関係ないです」

「また合コン?」

「違います」

「じゃあ幼馴染の男と会うの?」

「えっ…?」

と、声を上げたと同時に葉山社長の大きな手が私へと伸びてくる。


「うわっ」


伸びてきた手に肩を強く押されて私はそのまま後ろに倒れてしまった。仰向けになった私の上に葉山社長が覆いかぶさってくる。

突然、押し倒されて状況が理解できない私とは反対に葉山社長は楽しそうに笑っていた。
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