俺様御曹司と蜜恋契約
「よしっ。決めた。社長に会いに行こう」

テーブルに両手をついた優子が突然立ち上がる。

「ちょっと待ってよ優子」

「そんな取引やめさせてもらう。だいたい『俺の女になれ』なんて何様のつもりなの?大企業の社長がそんなに偉いのかっ!」

「…優子?とりあえず落ち着こう」

「ムリ!ああ、もうっ!頭くる!それにこれは花だけの問題じゃないの。その社長の言い方が気に入らない。そんな取引持ち掛けて女性をバカにしているにも程があるよ。許せない」

さすが小・中・高と生徒会長を務めただけはある。優子の正義感の強さは変わらない。そしてその強気な性格と行動に私はいつも憧れていたっけ。

「優子の気持ちは嬉しいけど。もしもここでその取引をやめたら商店街がまた再開発されるかもしれないよ」

「でもこのままだと花が一人で損してる」

「私はいいの。大丈夫だから」

取引で『俺の女になれ』なんてことを言われたけれど、葉山社長とは彼のマンションに行ってご飯を作って一緒に食べるだけの関係だ。最初の頃は突然キスをされたり襲われそうになったりしたこともあったけれど、最近ではそれも全くなくなった。葉山社長の俺様振りは相変わらずだけど、それにも今ではすっかり慣れてしまっていちいち腹を立てることも少なくなった。

この取引がいったいいつまで続くのかは分からないけれど、取引さえ守っていれば森堂商店街は葉山グループに再開発されずにすむんだから。

小さな商店街が大企業を敵にまわすのはきっと大変だと思う。だから私が我慢をすればいいだけ……。

本心でそう思っているのに、優子の表情がますます険しくなっていく。

「花のそういうところ子供の頃から好きじゃなかった」

俯きながら優子がぽつりと言葉をこぼす。
< 107 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop