俺様御曹司と蜜恋契約



「――おい、花」

「いたっ」

コツンと良い音が響いたと同時に頭に軽い衝撃が走った。反射的に頭をおさえて振り向くといつの間にキッチンへ移動してきたのか葉山社長が立っていた。

午前中は大事な会議があったらしく休日のはずの今日もスーツを着用。夕方からは海外出張があるらしく自宅に戻っても着替えはしないで、背広を脱いでネクタイを外しているだけだ。

「お前なにぼけっとしてんだ。鍋吹ているけど」

「えっ?」

そう言われて振り返ればコンロの上の鍋がぶくぶくと音をたてていて慌てて火を止めた。フタを開けて中を確認すると…良かった。焦げていない。

「ロールキャベツ?」

後ろから葉山社長が鍋の中を覗き込んできた。


優子と気まずい別れ方をした翌日。

あのままでは嫌なのでもう一度会いに行こうと優子の家に向かった。お土産として商店街の中にある『パティスリーSASANO』の苺ショートケーキを持って。

でもその途中でスマホが振動して葉山社長から呼びだれてしまった。

商店街の入口にいるから今すぐに来いと命令のような口調で言われて慌てて向かうと、休日だというのにスーツ姿の葉山社長が愛車の派手な黄色の高級車と共にいた。

マンションへ連れて来られ何かご飯を作るよう言われて迷ったけれど、最近覚えたばかりの料理を作ってみることにした。作りながら昨日の優子のことを思い出してついぼんやりしてしまったけれど…。
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