俺様御曹司と蜜恋契約



「どうしてあなたがここにいるんですか!?」

その2日後の金曜日。
仕事から帰った私は家には絶対にいるはずのない人物の姿を見て愕然とする。

「よぉ、花!」

スーツ姿の葉山社長がなぜか我が家の居間でくつろいでいた。

「あら花ちゃん、おかえり」

「おかえり、花」

両親が葉山社長と一緒にお茶をすすりながらおせんべいを食べている。

これは夢?幻?

「ほら、花も座れば?」

葉山社長が自分の席の隣を渡しにすすめてくる。今日初めて来たばかりなのにもうすっかり自分の家のような態度に呆れて何も言えなくなってしまった。

倒れ込むようにそこに腰を降ろすと、父親が黙ってお茶を淹れてくれた。それを私の前に置くと、葉山社長に視線を向ける。

「枝山君もお茶のお代わりはどうかね?」

「はい。いただきます」

……ん?
枝山って誰?

そう思いながら隣の葉山社長を見ると彼はきれいなウインクをしてみせた。

「……」

どうやら両親に偽名を使っているらしい。

「最近、花ちゃんの帰りが遅いからもしかしたら彼氏でもできたんじゃないかってお父さんと話していたばかりなのよ。ね、お父さん?」

「ん?ああ」

父親が短く返事をしながらお茶をすする。

「花ちゃんったら枝山さんみたいな素敵な彼氏がいるのにずっと黙っているんだもの」

母親の言葉に葉山社長が軽く頭を下げる。

「すみませんお母さん。僕1人で突然押しかけてしまって。仕事で近くまで来たので、そういえば花さんのご実家がこの近くの商店街で食堂を営んでいると聞いていたのでつい立ち寄ってしまいました。ご迷惑でしたかね?」

葉山社長の話し方はまるで別人のようだった。普段よりも数倍丁寧な話し方だし、見たことないほど謙虚な態度だし、それに『僕』って…呼び方まで変わっている。

「そんなことないわよ。花の彼氏に会えて嬉しいわ。ね、お父さん?」

「ん?ああ」

母親がニコニコと笑顔を浮かべている隣で、父親はまたお茶をすすった。
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