俺様御曹司と蜜恋契約
佐々木庵にはすぐに着いたけれどやっぱりお店の明りは消えていて。

「すみませーん」

きっちりと閉められた扉を葉山社長が手でドンドンと叩き始める。

「ちょっと葉山社長!迷惑ですよ」

私の声なんてまったく聞いてくれない。

「豆大福ほしいんですけど。開けてくださーい」

葉山社長は大きな声で叫びながら扉を叩き続ける。

「すみませーん」

あああああ、もうっ!
本当に迷惑だって!

「やめてくださいっ」

扉を叩き続ける葉山社長の手を力づくで止めようと思い、その腕にぎゅっとしがみついたときだった。


「――――花…?」


ガラガラと扉が開かれ、姿を見せたのは久しぶりに見る大好きな幼馴染。私を見て小さな目をぱちぱちとさせている。

「えっと…。久し振り」

そう声をかけられて、

「久し振り…」

私も小さくそう返した。

「花と会うのってあれからだから……2年振り?」

「うん。2年振りだね」

久し振りの再会は私たちの間にぎこちなさを漂わせる。陽太と会っていなかったたった2年の空白が、幼馴染として過ごしてきたたくさんの日々をきれいさっぱりとリセットしてしまったように感じた。

まるで初めて会った人のようによそよそしさを感じてしまい居心地が悪くなってしまう。

「花、その人は?」

陽太の視線は私の隣にいる葉山社長へとゆっくりと向けられる。瞬間、私は今の自分の状態を思い出し、葉山社長の腕にしがみついていた自分の手をパッと離した。

「こんな時間にどうしたの?」

陽太は、私と葉山社長を交互に見る。と、葉山社長は相変わらずな物怖じしない口調で告げる。

「お前んとこの大福ほしいんだけど」

「大福ですか?」

男性にしては小柄な体系の陽太が長身の葉山社長を見上げるような形になっている。なぜかそのまま2人で無言になっているので、その間に割って入るように私は葉山社長の前に飛び出して陽太に向かい合う。
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