俺様御曹司と蜜恋契約
「あのね、この人が佐々木庵の豆大福を気に入ったみたいでね。買って帰りたいんだって。もうお店も閉まっているから止めたんだけど、どうしても欲しいみたいで…」
そう説明すれば、陽太は笑顔で頷いてくれた。
「そっか。うん、いいよ。ちょっと待ってて」
お店の奥にいったん消えて、少ししてまた戻ってくる。その手には長方形をした深緑色の箱がある。それを『佐々木庵』というお店の名前の入った紙袋に入れると、葉山社長に手渡した。
「どうぞ。うちの名物の豆大福です」
「サンキュー」
葉山社長が上機嫌でそれを受け取る。
「いくら?つっても俺、今日カードしか持ってねぇんだけど」
ポケットから取り出した財布にずらりと並んだカードの数…。ここは私が現金で払った方が良さそう。そう思ったけれど、そういえば葉山社長の後を追って慌てて家を飛び出したせいで財布を持っていないことに気が付いた。
「すぐに家からお金持ってくるから待ってて」
そう言って走り出そうとする私を陽太が呼び止める。
「待って花。お金はいらない」
「でも」
「俺と花の仲だろ?お金なんて貰えないよ」
笑うと細くて小さな目はなくなってしまう。久しぶりに見た陽太の懐かしい笑顔に私は何も言えなくなってしまった。
「…うん。ありがとう」
すると陽太の視線がすっと葉山社長へ向けられて再び私に戻ってくる。
「花。本当に彼氏いたんだ」
「えっ?」
陽太のその言葉に私は隣にいる葉山社長を見た。どうやら陽太は葉山社長のことを私の彼氏だと勘違いしているらしい。
陽太が小さく微笑みながら言葉を続ける。
「てっきりウソだと思っていたんだ」
「ウソ?」
「俺が花に告白したとき。てっきり俺をフるための口実で彼氏がいるって花が嘘を言ったのかと思ってたから」
「……陽太」
陽太からの告白を断ったとき私はたしかに彼氏がいると嘘をついた。その方がしっかりとした理由があって陽太の告白を断っても彼を傷つけずにすむと思ったから。
「でも嘘じゃなかったんだな。……俺さ、花もずっと俺のこと好きだと思ってたんだ。だから告白したら絶対にオーケーもらえると思っていたけど、やっぱりそれは俺のただの己惚れだった」
己惚れじゃないよ。
『花も俺のこと好きだと思っていた』
その言葉が頭にガツンと響いた。
その通りだよ。
私もずっと陽太が好きだった。
それなのに…。
陽太からの告白に応えることができなかった。
そう説明すれば、陽太は笑顔で頷いてくれた。
「そっか。うん、いいよ。ちょっと待ってて」
お店の奥にいったん消えて、少ししてまた戻ってくる。その手には長方形をした深緑色の箱がある。それを『佐々木庵』というお店の名前の入った紙袋に入れると、葉山社長に手渡した。
「どうぞ。うちの名物の豆大福です」
「サンキュー」
葉山社長が上機嫌でそれを受け取る。
「いくら?つっても俺、今日カードしか持ってねぇんだけど」
ポケットから取り出した財布にずらりと並んだカードの数…。ここは私が現金で払った方が良さそう。そう思ったけれど、そういえば葉山社長の後を追って慌てて家を飛び出したせいで財布を持っていないことに気が付いた。
「すぐに家からお金持ってくるから待ってて」
そう言って走り出そうとする私を陽太が呼び止める。
「待って花。お金はいらない」
「でも」
「俺と花の仲だろ?お金なんて貰えないよ」
笑うと細くて小さな目はなくなってしまう。久しぶりに見た陽太の懐かしい笑顔に私は何も言えなくなってしまった。
「…うん。ありがとう」
すると陽太の視線がすっと葉山社長へ向けられて再び私に戻ってくる。
「花。本当に彼氏いたんだ」
「えっ?」
陽太のその言葉に私は隣にいる葉山社長を見た。どうやら陽太は葉山社長のことを私の彼氏だと勘違いしているらしい。
陽太が小さく微笑みながら言葉を続ける。
「てっきりウソだと思っていたんだ」
「ウソ?」
「俺が花に告白したとき。てっきり俺をフるための口実で彼氏がいるって花が嘘を言ったのかと思ってたから」
「……陽太」
陽太からの告白を断ったとき私はたしかに彼氏がいると嘘をついた。その方がしっかりとした理由があって陽太の告白を断っても彼を傷つけずにすむと思ったから。
「でも嘘じゃなかったんだな。……俺さ、花もずっと俺のこと好きだと思ってたんだ。だから告白したら絶対にオーケーもらえると思っていたけど、やっぱりそれは俺のただの己惚れだった」
己惚れじゃないよ。
『花も俺のこと好きだと思っていた』
その言葉が頭にガツンと響いた。
その通りだよ。
私もずっと陽太が好きだった。
それなのに…。
陽太からの告白に応えることができなかった。