俺様御曹司と蜜恋契約
「……ごめんね」

いったい何に謝っているのか分からないけど、気が付けばそう言葉にしていた。そんな私を見て陽太が困ったように笑う。

「俺の方こそごめん。2年前の告白を蒸し返して。今さらだよな。花にとって俺はやっぱりただの幼馴染だった。それなのに告白なんてしちゃったから会い辛くなって。……花とはもう元には戻れないって思ってた」

私もそう思っていた。

陽太からの告白を断った日、もう幼馴染には戻れないと覚悟した。どういう顔で会ったらいいのか分からなくて気が付けばあれから2年も経っていて…。


「おい。お前ら俺のこと忘れてね?なんか完全に今、空気になってて寂しいんだけど」

葉山社長の声にハッとなる。そうだ。陽太のことしか見えていなかったけど葉山社長もいたんだっけ。

「ごめんなさい」

「別にいーけど」

不機嫌そうにそう呟いた葉山社長の腕が突然、私の肩に回された。

「お前らの関係はよく分からないけど、花は今俺のだから渡さねーよ。陽太くん」

肩に回された腕に力が込められぐいっと引き寄せられる。すると陽太が微笑みながら口を開く。

「大丈夫ですよ。俺は花のただの幼馴染です。それに俺もうすぐ結婚するんで」

「えっ?」

それに驚きの声を出したのは私だった。

「あれ?花知らなかったの?」

陽太がきょとんとした表情を私に向ける。

「優子から何も聞いてない?」

「…う、うん」

今、初めて聞いた。
陽太が結婚するなんて。

「おかしいな。優子のやつ花にはまず自分一人で報告したいって言ってたのに」

独り言のように呟いた陽太の視線が私に向かう。

「この前ジョージさんのカフェで優子と会わなかった?」

「この前?」

そう言われて思い出した。
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