俺様御曹司と蜜恋契約
さっきから葉山社長は何を見ているのだろう?

歩道の方をぼんやりと眺めているようだけど…とその視線の先を追ってみると。

「アリサのやつ見ない間にずいぶん可愛くなってんな。俺に恋して一皮剥けたか?」

ここから少し先の方でちょうど雑誌の撮影が行われていた。最近テレビでもよく見掛ける人気ハーフモデルがカメラに向かってころころとポーズをきめている。

そしてそんな彼女をじっと見つめる葉山社長。

「あいつフッたの失敗だったなぁ。もう少し手元に置いておけばよかった。あーあ、惜しいことしたな…………ん、何?」

じとっと睨む私の視線に気が付いたのか葉山社長の顔が私に向き直る。

「いえ、何でもありません」

そう答えて再びパフェを食べ始めるけれど、やっぱり聞きたいことがある。

「葉山社長は今まで何人の女性とお付き合いしたことあるんですか」

「何人って…。さぁな、いちいち数えたことねーから」

つまり数えきれないほどたくさんってことか。そんな質問をした私がバカだったのかもしれない。と、ため息がこぼれた。

葉山社長にとって女性と付き合うということはまるで息をするように自然なことなんだと思う。

だからあのときだって…。

『今度は俺に愛されてみれば?』

きっと深い意味なんて何もない。


それなのに……。


葉山社長にかけられた言葉が耳から離れない。


本気じゃないって分かっているのに。


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