俺様御曹司と蜜恋契約



「わぁ…!すごくきれい」

眼下に広がる東京の街に思わず歓声が漏れた。夜景も素敵だけれど明るい昼間の様子をこうして眺めるのもまたいいかもしれない。

カフェを出た私たちは葉山社長の運転する車で少し移動して、ビルの上にある展望台へと来ていた。

「お前のその反応、前にもどこかで見たな」

「え?」

「…ああ、そうだ。初めて俺の家に来たときだ」

そういえばあのときも私は葉山社長の高層マンションから見える夜景に思わず見惚れてしまったっけ。

もうずいぶんと前のことのように感じてしまう。あのときはどうしてあんな取引をしてしまったんだろうって少しだけ後悔していたけれど今はその後悔がすっかり消えていて。

「あっ!あれ、葉山グループの本社ビルですよね?」

「ん?」

「ほら、あそこにあるの」

高層ビルが立ち並ぶ中にその建物を見つけた。見た感じ他のビルと作りが同じだから自分でもどうしてすぐに見つけられたのか分からない。

「どこだ?」

葉山社長ですら自分の会社のビルを発見できていないのに。

「ほら、あっちの方角にあるあの建物です」

曖昧な説明の仕方だけれど一生懸命そこへ向けて指をさす。すると私の少し後ろに立っていた葉山社長の腕が伸びてきて、私の顔の横を通り過ぎるとガラス窓にトンと手をついた。まるで後ろから包まれるような状態で…。

「お前よく見つけたな」

耳元で聞こえた声にドキンと心臓が高鳴った。葉山社長の顔が私のすぐ隣にある。振り向けば鼻と鼻がぶつかりそうなそんな距離。

「あっ、あったあった。あれか」

そんな葉山社長の声にいちいち心臓がどきどきとうるさい。それを悟られないように私はひたすら前だけを見つめていた。
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