俺様御曹司と蜜恋契約
「お前の商店街はここからだと見えねぇか」

「そうですね。小さい商店街だからビルに埋もれて見えませんよ」

この体制のまましばらく東京の街を2人で眺める。


小さい頃、祖父から昔の森堂商店街の様子を白黒写真で見せてもらったことがある。その写真にはまわりに大きな建物なんて一つも立っていなかったし、今の姿からは想像できないほどたくさんの人たちで賑わっていた森堂商店街の様子が写っていた。

だんだんと商店街のまわりに大きな建物が立ち始めて、24時間空いているスーパーやファストフード店やコンビニなどができていくたびに森堂商店街から人足が減っていったそうだ。

今でも賑わっている商店街がある一方で、森堂商店街のように忘れ去られていく商店街もある。その土地を利用して新たな商業施設を作ろうとしたのが葉山グループだ。

そして今、私と一緒にいるこの人がその会社の社長なんだ……。

ちらっと視線を葉山社長に移せば、彼も私のことを見ていたようで視線ががっつりとぶつかった。それを先に反らしたのは葉山社長の方で。

「…………そろそろ帰るか」

ガラス窓に突いていた手を離すと、葉山社長は私から距離を取った。


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